学習会参加報告メモ「シンポジウム『エコ+クリエイティブ』が起こすイノベーション」(コクヨ)

開催は昨日となる2010年11月16日。コクヨ(本社・大阪市)の東京ショールームにて、見出しのタイトルのようなシンポジウムが行われた。
第1部は坂本龍一さんと富野由悠季さんというビッグネーム2人のパネル、第2部は坂本さんが残ってのコクヨ社長・黒田章裕さんとのパネル。
ファシリテーター(とあるが実際は司会進行役)は枝廣淳子さん。
競争率は高そうだったが、運良く抽選に当選したので行ってきた。


大阪時代は一応コクヨの大阪ショールームにも取材に行ったんだが、(リサイクル関連品目の確認、的なテーマでそれ関連商品をいっぱい見た記憶が)よく考えたら東京のショールームはまだだった。けれども今回は、自分の時間配分的にシンポジウム優先。ショールームはまた次の機会に。残念。



さて、前半1部はビッグネーム2人の対談。
といっても、ほとんどの話は富野さんからの発言で、対する坂本さんはというと適度なツッコミ役と一部情報の補足、そして話題を転がすためのテーマの提供といった役どころ。さらに、枝廣さんがそれらを丁寧にサポート。
個人的には、枝廣さんの進行の上手さ(含む情報の補足)に呻った。

始まって間もなく、富野さんから「ガンダム(初代)をつくっている辺りに影響を受けたのがローマクラブの『成長の限界』だった」という話は、正直驚いた。
それを受けて、枝廣さんから会場へ「『成長の限界』を読んだ方はどのくらいいますか」と挙手での問いかけ。自分が想定していたよりも挙手は少なく、今回の聴衆はエコ関連というよりもビッグネーム2人のファンや関係者が中心だった模様。(ちなみに自分が読んだのも相当前だから、内容なんかはあやふやだったりする、ははは……)

あとは、坂本さんの基本認識はかなりまともなのが、とても安心できた。有名人的な上から目線がなく、良く勉強している感じが頼もしい。途中、アーサー・C・クラークを持ってくるところなんか、ニヤリとしてしまった。
こんな賢い人が、松ちゃんや浜ちゃんに弄られていたんだもんな、90年代……と連想してしまった自分が、ちょっと嫌になったり。

一方の主役、富野さんは、むしろ自分としては、「日本の有名文化人がエコ業界や環境問題というものをどう捉えているのか」のサンプリング資料として興味深かった。標本的扱いをして申し訳ないが。
話を聴いた範囲で判断するならば、頑張って勉強している感じだったが、ちょっと分野があさっての方向のような気がしないでもない。
たとえば原発核融合に着目しながらも、その廃棄方法には全く目を向けていないようだったし、全体的な情報の収集がどうもバランスが悪い印象を受けた。もちろんこれは坂本さんと比べてだから、逆にサブカル系文化人として見れば努力家だし相当まともな人だとは思う。


あとは若干マイナスの印象の表明になるのだが、SF読みではある自分だが軌道エレベーターには否定的なので(フィクションとして楽しむ分にはいいがリアリティがないだろう、という立場)、その辺りの話題で巻きに入った辺りから正直ダレた。
ガンダム作中概念である「ニュータイプ」をこの21世紀のリアル(現実)に求めるかのような結びも、どこまで遊びでどこまでが本気なのか、壇上の3人(含む司会)の意図が見えなかった。恐らく話の最中散々出てきた「考えずに習慣で判断するニンゲン(大人)たち」(富野さん発言にあったアーレントの引用による)辺りの逆主題としての、「みんなもっと考えようぜ」ということを言っているつもりなのだろうけれども、舞台の3人の間で完結していた感じ。
この辺りは、なんかまあ有名人だから仕方がないかというところで、オチにするとして。



後半の第二部。むしろ個人的には(というか、環境業界人的にはとでも言うか)、こちらの方が興味深かった。
実は黒田社長が関西人であるということで、若干自分の関西贔屓で評価ポイントが加算されている面もあるとは思う。

話された内容としては、企業がどうエコ商品を開発していったのか(それと自社商品のエコ見直しをどうやっていったのか)、またそれをどう社内でモチベーションを持たせていったのか、それはトップダウンなのか(だとしたらその反応はどうか)、逆にボトムアップの提案はあったのか、はたまた取引先やあるいは下請け業者等との整合性はどうしていったのか、顧客への説明責任はどうしたのか、などなど。
この辺りの話が明快に出されていて、やはり資本に余裕のあるところはやる気さえあればやれるんだな、という印象を強く受けた。
面白かったのが、最初はトップダウンで行っていた自社商品の徹底した見直し(エコバツ)を続けてきた、それを受けての反響が、現場の社員たち(たぶん。メモがちょっとあやふや)からボトムアップで上がってきた「エコ駅伝」という社内運動であった点。
この辺りはいろいろとかなり面白い話が聞けたのだが、そこで課題として持ち上がっていること(社内での参加が半数ほどでしかない、エコ行動とはいってもものによっては数字・数値なものが出しにくいテーマがあり評価に困る、など)は、環境問題と言われていることの解決方法を考える上であちこちから出てきていることと重複する課題でもあり、深く頷かされた。

それと話が戻るが、コクヨが全商品の見直しに着手したその実際の取り組みのとっかかりは、企業の利益をどうしていくかというのが起点だったと素直に言う辺りは、そこそこ共感が持てた。
もちろんそのスタイルの中には企業の社長としての、演技とまではいかないけれども広告的役割としての話も含まれているであろうが。
とはいえ、関西では「ぶっちゃけ」と胸を開いて話をすることにより高い評価を置くから、ここはかなり黒田さんの本音であろうし、あまり飾ってはいないものとは思う。

この2部での会話は、1部とは打って変わって、黒田さんと坂本さんの掛け合いで進む。会話がポンポンと弾む感じ。
個性的な話だけを言えば1部の方が受けも良かっただろうし笑いも多く聞かれたが、3人が話がしやすかったであろうという点では2部の方がシンポジウムらしい印象を受けた。やはりこれは、2部の3人の方が環境問題に関する基本的な情報の土台がきちんとあることも大きかったのではないかと思う。



以上のまとめは、あくまでも自分の印象なので、他の参加者からはまた違った提示があるかもしれないので、その辺りを含みおいて参考にしていただければ幸い。
と、いうことで。


(明日の通常更新は、たぶんお休みの予定です……)
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